帝銀事件はこうして終わった―謀略・帝銀事件

帝銀事件はこうして終わった―謀略・帝銀事件

帝銀事件はこうして終わった―謀略・帝銀事件

面白いなあ。近所のかかりつけの歯医者についての「俺はどういうわけか、あの歯医者が帝銀事件の真犯人のような気がしてならないのだ……」といふ印象が、自分の人生をかける帝銀事件への捜査にならうとは誰が思へようか。コレは本当に著者の帝銀事件に対する人生をかけた調査の集大成といへる。だからこそ真に迫る内容でグイグイ引き込まれる。他の帝銀事件関連本は未読ではあるけど、これだけ読めば実行犯はこの歯医者であること、背後はよくいはれるやうにGHQであることは信じてしまふ。しかし書名にある通りに「帝銀事件はこうして終わった」とはなほいへないと思ふ。
GHQが旧陸軍の登戸研究所の毒薬「ACH=アセトンシアンヒドリン=青酸ニトリル」を試すために、10数人の民間人を殺すだらうか。目的に対する手段が残虐すぎる。ここに違和感を感じざるを得ない。警視庁と米国公安当局が持つてゐるらしい秘密が明らかになつた暁に帝銀事件に真に幕が下りるのではなからうか。